看護師の医療情報ニーズと医学・看護図書館および患者図書室の役割と機能についての実態調査等報告書 2007

要旨

大阪市立大学大学院創造都市研究科では、教員・院生共同プロジェクトを行っている。 本報告書「看護師の医療情報ニーズと医学・看護図書館および患者図書室の役割と機能に ついての実態調査報告書2007」は、2 つのプロジェクトの合同報告である。 本報告書は2 部構成になっており、第1 部は「看護師の情報収集行動」として、第1 章 「大学病院看護師の情報収集行動実態調査」は、大学病院看護師の情報収集行動について 明らかにすることを目的に、2 つの大学病院において実態調査を実施し、図書館による研究 を行う看護師への支援の必要性について考察した。実態調査のうち、平成18 年9 月に大阪 市立大学附属病院の看護部に依頼して行った「大学病院における看護師の情報収集行動に ついての実態調査-大阪市立大学附属病院の場合-」のアンケートは資料として添付した。 第2 章「看護師の情報収集行動研究文献レビュー」では、看護師への研究支援における 大学図書館の役割を模索するため、第1 節:大学図書館における臨床看護研究支援に関連 する看護師養成教育、臨床看護研究における現状について文献レビュー、第2 節:看護師 の情報行動に関する先行研究の紹介、第3 節:我が国における看護師養成課程の多様性、 第4 節:我が国における看護研究の歴史、第5 節:看護研究の困難さについての看護師か らの報告の文献レビュー、第6 節:臨床看護研究支援の取り組みについての看護師や大学 教員による報告を文献レビュー、7 節:EBM(根拠に基づく医療)という考えの流れを受 けたEBN(根拠に基づく看護)における図書館の役割について取り上げている。 第2 部は、「患者図書室の実態と課題・今後」と題し、第3 章「日本における看護図書室 の実態-事例を中心に-」は、平成17 年度、18 年度の「公開シンポジウム医療情報を考え る!Part1」及び「同Part2」のまとめである。2 回の公開シンポジウムを通じて患者・ 市民に対する医療・健康情報の必要性と患者図書室(情報室)の必要性を論じている。 第4 章「患者図書室の課題と今後」では、患者図書室の現状と課題について、主に法律 と政策面から現状を考察し、今後の方向性として、現状を分析し、患者・市民への医療情 報サービスに対する患者図書室と公共図書館との連携について模索した。 平成19 年4 月1 日実施の医療法改正(平成18 年6 月14 日制定)は、医療を受ける者 による医療に関する適切な選択を支援することを目的として改正された。患者への医療情 報提供の必要性について、政府が法の整備や提言を行っているにも関わらず、病院の設置 母体は、患者図書室の設置には積極的に賛成ではなく、病院機能評価が終わると、患者図 書室を閉鎖する病院すらある。その主な原因は、患者図書室を設置すると、医療訴訟や医 療裁判が増加するという設置者の懸念によるところが大きい。 がんは日本人の死亡原因の約31%(病気にかかる率が骨折よりも多いといわれている。) で、年間30 万人以上の患者が死亡している。平成18 年6 月にはがん対策基本法が制定さ れた。この法律の成立の背景には、患者の働きかけが大きな力になったと言われている。 がん対策基本法に、がんの医療情報に関する情報の収集の項があり、2006 年10 月に国立 がんセンターがん対策情報センターが設置された。この中では、一般向け、医療関係者向 け、がん療法連携拠点病院向けの3 つの情報に分けて提供されている。また、がんを廻る 情報は、新聞をはじめとする各種メディアが毎日のように医療情報についてのニュースを 取り上げ、医療関係の法律、医療情報の公開、十分な情報に基づく患者の自己決定権の保 障、そして「市場の選択」を通じた医療の質の向上も論議され始めている。これを支える 仕組みとして、病院機能評価制度がある。Ver.5(最新版)には、患者、家族または住民 向けの保険・医療・福祉関連の図書を整備し、健康教育や医療に関する情報提供に役立て ている事例を取りあげ、病院図書室や医学図書館の積極的な関与について初めて触れてい る。例えば、大学の附属病院においても患者図書室の設置が必要とされてきている。 こうした環境の変化を背景に大阪における患者図書館の実現を目指し、2年間のまとめ (3 章)と今後(4 章)について論究した。
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