日本型経営におけるICT 基盤による知識創造コミュニティ支援の研究

要旨

野中1らは日本的,かつ組織的知識創造の特徴をSECI モデルとして分析した. そこでは,組織に内在する知識を形式知と暗黙知に分類し,それらの相互変 換の動きを「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」という4つのモード のサイクルとして捉えている.形式知を操作する領域,すなわち,「連結化」 モードでは,ナレッジデータベースなどの情報ツールの活用が有効であり, 今日のナレッジマネジメントにおいて主たる対象となっている.ところが暗 黙知を主な対象とする「共同化」「表出化」モードにおいては,人同士によ る自発的,かつ組織的な共体験が重視され,有効な情報ツールが見いだせて いない.

本論文では,自発的かつ組織的な共体験は人同士の相互信頼に影響を受け る点に着目し,企業内において組織員間の「信頼感」を定量的に把握し,自 発的な組織形成を促進するための「プロジェクトクーポン制度」を提案する. この方式は,企業内に存在する従業員間の信頼関係を「プロジェクトに対す るクーポンの寄付」という行為で置き換え,その寄付数をもって信頼感の代 替指標にしようというものである.本制度は,共同化プロセスを推進するプ ロジェクト活動とそのリーダに対する,相互評価と自然淘汰作用を発生させ る.プロジェクトクーポン制度の実行を,グループウェアなどのICT 基盤を 用い,支援することによって,日本型経営組織に対して並行して存在しうる 「信頼が価値を生むネットワーク」と「SECI モデル共同化プロセス実行」 のためのコミュニティ集団生成を支援する方策を検討する.

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